クリント・イーストウッド映画の傾向と対策【拘束・パイロット編】 ~ 『ハドソン川の奇跡(2016年)』

2016年は現在アメリカ映画界最高峰の演出力を誇る映画作家の一人、クリント・イーストウッドの新作が公開されるという幸運な年です。1930年生まれの86歳というのですからアメリカ映画界最高齢かつ最強の映画監督ともいえます。子供の頃から見ていたイースト…

スティーブン・スピルバーグ映画の傾向と対策【巨大生物・物体編】〜 『BFG:ビッグ・フレンドリー・ジャイアント(2016年)』

2016年は現在アメリカ映画界最高峰の演出力を誇る映画作家の一人、スティーブン・スピルバーグ(以下スピと称す)の新作が二本も公開されるという幸運な年です。スピと同時代に活躍したジョン・カーペンター(以下ジョンカペと称す)が早すぎる隠居状態を強…

ローラン・トポール ~ 『ファンタスティック・プラネット』だけじゃないその多彩で多才な超ブラック・ユーモア作品世界

僕にとってローラン・トポール(Roland Topor:1938-1997)というと『ファンタスティック・プラネット』の作画の人というぐらいの認識しかなかったのですが、ググってみると小説家(*1)、イラスト・風刺画家/アニメーション作家(*2)、前衛演劇家(*3)、…

『ガルシアの首(1974年)』 ~ 跪き横たわる女と、復讐する男と、首の三角関係が織りなす行きて帰りし怒りのデスロード

『怒りのデスロード』という某映画のサブタイトルは「激怒(フューリー)の“怒り”」と「ロードムービーの“ロード”」を「死の“デス”」で繋げるというのですから、なかなか悪くない邦題ではないでしょうか(“怒りのフューリーロード”だと同語反復になりますし…

ついに自然界に働く第5の力『フィフス・エレメント』 発見か?<今そこにある未来ニュース④>

な、なんだってー!、ヤバイ、宇宙ヤバイ、マジヤバイ。これホントならすごいニュースですね。 wired.jp 自然界に働く「第5の力」発見か - アストロアーツ www.gizmodo.jp このニュースの何がヤバいのかというと「今回の発見が正しければ(基本相互作用の)4…

現実化する『ミクロの決死圏』のナノマシーン医療 〜 <今そこにある未来ニュース③>

過去の予言的なSF作品を現実のニュースと絡めて未来を妄想する与太話の不定期連載企画<今そこにある未来ニュース>の第三弾です。今回はかなり現実化されているネタなので妄想分少なめです。ちなみに過去の二回は以下の記事となります。 callmesnake1997.ha…

『ゲッタウェイ(1972年)』 〜 サム・ペキンパー、あるいは時空を拡張するマゾヒスト

“永遠の名作”という最大公約数的な縛りのためなのか大して面白く無い映画が大半を占めている印象がある「午前十時の映画祭」ですが、たまに本当に面白い映画も上映してくれますので要注意です。本作がまさにその面白い映画ですので見ていない人はまずは劇場…

夏といえば金魚、あるいは空飛ぶ魚に関連するオススメ作品10選

今週のお題「映画の夏」、夏といえば金魚です。 前回記事の金魚に乗る学校に通うマーセリンの図を眺めて気づいたのですが、たったの40件も記事がないこのブログの中に金魚や空飛ぶ魚に言及している作品が結構あるかも...という事で強引に今週のお題と絡め…

『アドベンチャー・タイム(2010年~)』 ~ ワンピースより面白い!?疲れた大人にもおススメなカートゥーン、シーズン1の激選エピソード7選

特に何の予備知識もなく見始めて、すっかりお気に入りとなりました『アドベンチャー・タイム(2010年~)』 ですが、ようやくシーズン1も終盤に入りつつあり、その激選エピソードを7つほどご紹介したいと思います。ちなみにこのアニメは僕の今年の上半期ベ…

『古都憂愁 姉いもうと』/ 『なみだ川』 (1967年)~ 三隅研次の女性映画③(藤村志保編)

『古都憂愁 姉いもうと(1967年)』 キャストは藤村志保と新人の若柳菊(現:鹿内寛子)の姉妹で京都の料亭を舞台に色々入り組んだ人間関係が最後には修復する話です。八千草薫、船越英二、藤岡琢也の助演陣もキャラの立った素晴らしい演技です(若柳菊に関…

『雪の喪章(1967年)』 ~ 三隅研次の女性映画②(若尾文子編)

『雪の喪章(1967年)』 傑作『眠狂四郎無頼剣 (1966年)』の次に撮られた作品で、同じ年に『古都憂愁 姉いもうと』と『なみだ川』が撮られておりますので三隅研次の女性映画メロドラマ三部作の第一弾とでもいうべき作品でございます。 原作は金沢出身の女…

『女系家族(1963年)』 ~ 三隅研次の女性映画①(京マチ子編)

男性向け時代劇や活劇を主なジャンルとして活躍し、広くは海外のジョン・カーペンターやサム・ライミやクエンティン・タランティーノにまで影響を与えた(*1)三隅研次ですが、大映プログラム・ピクチャーの職人監督として、市川雷蔵の『眠狂四郎』や勝新太…

『白夜(1971年)』 ~ 【完全解説】巨匠 ロベール・ブレッソン、ドストエフスキー原作による孤独なオタ男の純愛ラブコメ音響映画

いつのまにか世界初BD化されたものの出荷枚数が少なかったのか転売屋によって値を吊り上げられて一騒動となっていた本作ですが、ようやく定価で購入できるようになったようです(amazonなのに値引き無しですが)。 発売数年後に品薄になって価格吊り上げなら…

『シン・ゴジラ(2016年)』 〜 庵野秀明による3.11以降の総力戦「ゴジラのいちばん長い日」

タイトル まずこの映画は現在の東宝マークから始まり、次に一昔前の東宝マークが表示され、次にこれまた一昔前の青バックに白地の「東宝映画作品」が表示され、一作目の例の足音の地響きとゴジラの咆哮と共に黒バックに白地の「シン・ゴジラ」のタイトルが表示…

『キングコング対ゴジラ(1962年)』 ~ チェレンコフ放射の青い光(4K リマスター)

チェレンコフ放射 - Wikipedia チェレンコフ放射(チェレンコフほうしゃ、Čerenkov radiation、Cherenkov radiation)とは、荷電粒子が物質中を運動する時、荷電粒子の速度がその物質中の光速度よりも速い場合に光が出る現象。チェレンコフ効果ともいう。こ…

『映画監督 村川透 和製ハードボイルドを作った男』 山本 俊輔/佐藤 洋笑 (著)

僕の大好きな監督である村川透さんのドキュメント本が出ていたので遅ればせながらご紹介します。自分は監督の大ファンを自称しつつもそのTVも含めると400本(!)近いフィルモグラフィーの大部分を見ていないというファン失格の不届き者です。 まぁ、自称フ…

『タイムトラベル少女(2016年)』 ~ ウィリアム・ギルバートとジョルダーノ・ブルーノとサッカーボール型ホールケーキが時空を交差する土曜の朝アニメ

【登場人物】 ・早瀬 真理 三年間行方不明である科学者の父とパティシエールな母を持つタイムトラベル少女です。 ・ウィリアム・ギルバート - Wikipedia 地球それ自体が一つの大きな磁石からなっているということを、球形の磁石のまわりの小さな磁石の振る舞…

【必見!】美しい、美しい世界の、世界のアニメーション10選

アニメーションの魅力は一から世界を構築できることにありますので、その構築された世界が如何に美しいかどうかでその魅力が決まるのではないでしょうか。 という訳で、魅力的な“必見!”の美しい、美しい世界の、世界のアニメーション10選をご紹介します(単…

【必聴!】暑い夏の夜を乗り切るクールでコロンコロンしたブラジリアン・レアグルーヴ10選

暑い~。寝苦しい〜。こんな時は少しでもクールな音楽を聴いて涼みたいですよね。ジャンルは何でもいいんですけれど日本より暑い国の人たちが聞く音楽がいいんじゃないでしょうか。何せ日本よりさらに暑い国の人たちが涼む音楽ですからね。間違い無しです。…

『高い標的 / The Tall Target /(1951年)』~アンソニー・マンによる究極の縦長映画

縦長映画?そんな映画のジャンルは存在しないのですけれども、この映画を勝手ながらそう呼ばせて頂きます。 “The Tall Target ”略して“TTT”。このアルファベットの中でも縦長といっていい文字である“T”がこの映画のタイトルとして三つ並んで冠されているのは…

アンソニー・マン/フィルム・ノワール(仮想)映画祭: 第三夜

ようこそ。アンソニー・マン/フィルム・ノワール(仮想)映画祭: 第三夜へ。 (仮想というより妄想になりつつありますが...)今夜はアンソニー・マンフィルム・ノワール時代初期の作品『仮面の女(46年)』とイーグル・ライオン社フィルム・ノーワール…

アンソニー・マン/フィルム・ノワール(仮想)映画祭: 第二夜

ようこそ。アンソニー・マン/フィルム・ノワール(仮想)映画祭: 第二夜へ。 今夜は1945年ぐらいから流行り始めたといわれるセミドキュメンタリー風ノワールの『Tメン(47年)』とそのセルフリメイクと言われる『国境事件(49年)』をお送りします。 実録…

アンソニー・マン/フィルム・ノワール(仮想)映画祭: 第一夜

(仮想ですよ。念のため) 以前は輸入盤や特殊な機会での上映でしか見ることができずになかなかその全容を把握出来なかったフィルム・ノワール時代のアンソニー・マンですが、今では数千円払えば字幕付きのDVDが簡単に手に入るようになりました(さらに画質…

2016上半期ベストアニメ5選

今週のお題「2016上半期」 お題に沿って上半期のベストを書いてみたいと思います。最近の映画は自分の趣味とはかけはなれた物ばかりなので(←単に見てないだけかも)アニメで選んでみました。以下独断と偏見で適当なことを書きますが読み流してくださいね。…

顕在化する“『人類補完機構』ク・メル問題” 〜 <今そこにある未来ニュース②>

コードウェイナー・スミスについて 『人類補完機構』は言わずと知れたコードウェイナー・スミスによる架空の未来史に出てくる宇宙的な支配組織の名称です。スミスは本名をポール・M・A・ラインバーガー といい、ジョンズ・ホプキンス大学のアジア政策の教授…

顕在化する”『銀河鉄道999』寿命格差問題” 〜 <今そこにある未来ニュース①>

(今回はまとめニュース風で) 『銀河鉄道999(1979年)』は当時の一流職人スタッフが集結したジュブナイル物としては日本アニメ映画史上最大の金字塔ともいえる昭和の名作ですが、意外にもこの映画に描かれるテーマの一部分は極めて今日的な社会問題を取り…

『旋風の中に馬を進めろ(1966年)』 〜モンテ・ヘルマンによる一卵性双生西部劇二本立て③:旋風編

『旋風の中に馬を進めろ』 ~ 切り株を刻む音が止んだ時 砂漠を舞台に絶えず移動を続ける追跡劇が繰り広げられる『銃撃』とは対称的に『旋風の中に馬を進めろ』の舞台は山間部に限定されます。 背中越しに駅馬車の襲撃のタイミングを伺う山頂からの俯瞰気味…

『銃撃(1966年)』 〜 モンテ・ヘルマンによる一卵性双生西部劇二本立て②:銃撃編

『銃撃』 ~ 条理ある行動の彼方に 一般的には不条理で難解な「反=西部劇」と見做されることが多いこの映画ですが、ヘルマン本人も否定しているようにもちろんそれは誤解であります。 まず登場人物達の行動の動機は映画の冒頭部分にセリフ等で示されますし、…

『銃撃』/『旋風の中に馬を進めろ』(1966年) 〜 モンテ・ヘルマンによる一卵性双生西部劇二本立て①:生誕編

1964年のクリスマスプレゼント 1964年の12月24日、若き駆けだしの演出家とこれまた若き駆けだしの俳優兼脚本家が、その俳優自身にインスパイアされた出来事を元に『エピタフ(墓碑銘)』というタイトルの映画を作ろうと構想を練っています(ハリウッド映…

『果てなき路(2010年)』 ~ 新鋭ミッチェル・ヘイブンによる果てなき自己言及パラドックスのミステリー映画 ~

ミッチェル・ヘイブンという未知の新進気鋭の監督によって制作された『果てなき路(Road to Nowhere)』というミステリー映画は全編一眼レフのデジタルカメラ(Cannon EOS 5D MARKⅡ)によって撮られた世界初の革新的ともいえるデジタルシネマです。彼は現在…