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顕在化する“『人類補完機構』ク・メル問題” 〜 <今そこにある未来ニュース②>

コードウェイナー・スミスについて

人類補完機構』は言わずと知れたコードウェイナー・スミスによる架空の未来史に出てくる宇宙的な支配組織の名称です。スミスは本名をポール・M・A・ラインバーガー といい、ジョンズ・ホプキンス大学のアジア政策の教授であり、外交官でもあり、また軍人としても陸軍情報部の大佐を務めていた政府の要人でもあリました。これが例えばラブコメなんかですとでは学年トップの優等生、では大人気のラノベ作家みたいな現実ではありえなさそうな設定がありえたりするのですが、この人はガチででは大統領の顧問まで務めたスーパーエリート、では知る人ぞ知るSF作家だった人なのです。詳細はコードウェイナー・スミス - Wikipediaをどうぞ。

そして彼の小説は未来を見てきたかのごとく予言的です。その予言の先見性の高さは涼宮ハルヒ嬢に未来人として紹介したいくらいのレベルです。

例えば『星の海に魂をかけた女』で予言されていた光子帆船JAXAのIKALOSを例に出すまでもなく現実化しつつありますし、『青を心に、一、二と数えよ』で予言されていた鼠の脳を幾層にも積層加工した有機コンピュータ(キューブ)もかなり現実化しつつあります。そのうち2次元にダイブする平面航法や死者の記憶と思考を継承するロボットや人の体の代理となる電気マネキン(MEEE)等のアイデアも実現するかもしれません(ただし、その全てを検証するには後一万四千年程要します。そういうスケールの大きなお話です)。

おそらく彼は政府の要人としてエリア51宇宙人ペンタゴン機密文書に接触して未来の出来事を小説にしたのではないかと思える程の先見性の高さなのですが、それほど緻密な想像力と確固たるビジョンと先見性のあるイデアを持って未来世界を描いたユニークなSF作家ということになります。


 現実化する『シェイヨルという名の星』

では、まずは彼の予言の一端を示す『シェイヨルという名の星』の簡単なあらすじから。

シェイヨルは第一級の犯罪者が送られる流刑惑星。囚人たちは「ドロモゾア」という寄生体にとりつかれ、手や足や頭…等々、多様な体のパーツが生える。そしてそれをこの星の管理人である牛人ブ・ディカットが頃合をみて収穫して別の世界へと供給。囚人は永遠の臓器部品の供給源として永遠に生き地獄を味わう。

この作品はダンテの「神曲」をモチーフとした60数ページの非常に短い話ながらもそのグロ描写が強烈な印象を残す作品です。

この再生医療を懲罰として臓器売買を行うという奇抜なアイデア半世紀前では純然たるサイエンスフィクションだったのですが、現在の科学ではまさにこれと同じこと行うことが可能なノンフィクションになってしまいました。

臓器の苗床は囚人ではなくになりますが、これを臓器部品の供給源として利用します。また同じようにiPSを使ってマウスの皮下に人の耳を培養することも可能になっています。


gigazine.net

www.gizmodo.jp 

 (※注:以下の記事にはかなりグロい写真が含まれます)

www.asahi.com 


そしてこの異種移植を可能にしたのが遺伝子を切り貼り可能にした「CRISPR/Cas9 」というゲノム編集の技術です。なんか赤木リツコ博士が某計画(言いませんよ!)で使ってそうな厨二ゴコロをくすぐる名称のこのツールは、将来ノーベル賞確実と言われている革新的な技術です。

主に農作物の改良や難病の治療に効果を発揮することが期待されていますが、人為的なデザイナーチャイルドやキマイラの生成も可能にするという倫理的な問題の懸念も孕んでいます。

尚、このツールは現在希望販売価格7万円代と大変お求めやすい価格になっておりますのでご要望の方は下記のリンクよりカタログ請求可能です。


www.cosmobio.co.jp  

newswitch.jp 

news.mynavi.jp


 現実化する?ク・メル問題

人類補完機構』にはク・メルというを起源としたガーリー・ガール、おもてなしの遊び女(古代日本のゲイシャみたいな名誉ある職業ですよ)が登場します。

彼女はいわゆるコスプレ等のネコミミ属性の起源とも言われていますが、現実世界ではネコミミより先にミネズミが先に作られてしまいました(バカンティマウスと言います。バカンティはあのSTAPのお騒がせ教授ですね)。

で、現実的にク・メルのようなハイブリッド猫娘も技術的には可能な世界がすぐそこに来ているのですが、さすがにこれは倫理上の問題で直ぐには実現しないんじゃないかと僕は思っています。が、一方で知能レベルを少し上げて簡単なおしゃべりができるかわゆいキットンのペットを作るぐらいの事は将来やる人が出てきてもおかしくはないかとも思います。そしてそれが徐々にエスカレートすれば...。

たとえそれがペット的に限定されたレベルであったとしても生みだされた知性を持つ生命体に対して、その尊厳をどう扱うかということは今後現実に直面する問題になるのではないでしょうか。

小説では彼女を含むホムンクルス(犬とか鷲とか猿とか色々います)は「下級民」としていわゆる普通の人間である「真人」と区別/差別されます。いわばレプリカントのように半奴隷的に人間に奉仕する存在として意図的に作られた存在で、殺処分と隣り合わせの厳しい現実を生きています。そして彼/彼女らは半獣半人の存在ながらもその存在は機構内でも無視できなくなる存在となります。

スミスは将来人間がク・メルのような存在を作る技術を持った場合、何が起き得るかということをSF小説のフォーマットの中で政治的にシミュレーションしますが、その眼差しは意外と優しさに満ちています。ク・メル(クはキャットを示すC’)は人間に恋をしたり(純愛です)、逆に偽装結婚した少年に慕われたりします。また少女のド・ジョーン(ドはドッグを示すD’)はジャンヌ・ダルクや映画版のナウシカのように革命を率いて殉教者になります。そして彼/彼女らは徐々に人としての尊厳が認められる存在へと変化していきます。

最終的に『人類補完機構』シリーズは人類と下級民との共通な宗教的クライマックスが描かれる構想でしたが、作者急逝により未完となってしまいました。その構想の詳細は不明ですがスミスのことですから救いのある優しい眼差しの結末が描かれたのではと僕は想像します。

 

「でも、命より尊いものを見つけ、その素晴らしい何かを命と引き換えにするのが、命の義務でしょう」

 

ー『クラウン・タウンの死婦人』ド・ジョーンの裁判語録よりー

 

 


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