『マッドボンバー(1972年)』〜 オ・ソロシ巨人B・I・G(バート・I・ゴードン)によるB級映画の快作

最近特に何の予備知識もなくBS(シネフィルイマジカ)でやっていた本作を見てしまったのですが、これが思いのほか大変素晴らしく「ああ、これは映画だ」、とごく当たり前の感想を持ちつつもいたく感動してしまいましたのでここでご紹介させていただきます。  

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まずこの映画がどんな映画か簡単に一言で説明しますと、 
娘を亡くしておかしくなってる説教魔の爆弾男と、
自分の奥さんのヌード写真/映画を撮って見るのが趣味の変態連続強姦魔と、
上司の命令なんてクソ喰らえなダーティハリーなポリスメン
が三つ巴でコネクションしてマッドにボンバーする映画
です。
まぁ、上記の説明では何の話かさっぱりかと思いますが、この映画は大正生まれのその筋では有名なベテラン監督バート・I・ゴードンが監督、製作、脚本、撮影を兼ねるという非常に安あがりというか家内性工業的とも言えるハンドメイドな肌ざわりのB級映画です(過去作では奥さんが特殊効果を担当したり娘が出演したりしていたとか)。この映画も撮影監督を雇う予算がなくて自ら撮影したというエピソードが泣かせるB級振りです(詳しくは愛すべきB級映画~『マッドボンバー』~ – NOW SHOWINGを参照)。つまりよくある予算のかかった商品として統制の取れたハリウッド映画ではなく、インディペンデントにやりたい事をやりきっている非常にプライヴェートな、しかし娯楽映画のルーティーンをしっかり守っている職人監督の映画です。
それではまずこの映画のさわりをちょっと見てみましょう。

まずこの映画はゴミをポイ捨てしたオヤジに対して非常に生真面目そうな四角い顔に四角いメガネの逸見政孝をゴッツくした様な男(チャック・コナーズ)が
「ゴミを拾え、街が汚れるのはお前のせいだ、ブタめ。聞こえたか?言ってみろ」
とゴミをポイ捨てした哀れなオヤジの首根っこを掴まえて説教するするシーンから始まります。
そしてさらに
「街が汚れるのは俺のせいで、俺はブタだ」
と哀れなオヤジは強制的に謝罪させられ、捨てたゴミを拾わされます。
「(ゴミを)ポケットにしまえ。さぁ、気分がいいだろ?」
とご満悦な四角顔の男を後目になんだこの危ないヤツと一瞥して逃げ去るオヤジ
この一連のシークエンスが道路の向こう側から捉えられた臨場感溢れるワンシーン・ワンカットで描写されます。
 
あぁ、アブナイアブナイ、危険が危ない。なんか現実にもいますよね。ちょっとした細かいことで凄く怒る人。僕なんかそういうアブナイ人の匂いを感じたらすぐさま半径3メートル以内には近寄らないように用心する小心者ですが、これは映画の中の出来事なので安心してこのいかにも危なそうな四角顔で瞬きすらしないギョロ目の男を観察することが出来ますよ(良かった良かった、映画の中で)。
しかしこのたった数分の短いオープニングシークエンスのみでこの四角顔の真面目男が偏執狂的な他人の迷惑を顧みずに自分の正義を振りかざす男、つまり自己の過剰な正義で他者を過剰に傷つけるまさにテロリストの本質を表したマッドボンバーであるこという事が的確かつ簡潔に示されます。巧い、上手すぎる。そしてこの映画が素晴らしいのはこのようなキレッキレな演出がキャメラ=監督の視点として同化され、ダレる事なく最後の最後まで継続して持続してしまう点です(他にも面白いシーンが色々あるのですがネタバレになるのでやめます)。いやはや、まさにオ・ソロシ巨人B・I・G。Mr.ビッグです。 
 
≪原題はフレンチでもてなもんやでもなく『The Police Connection』≫
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ところでなぜバート・I・ゴードンがMr.ビッグなのかという事に関しては、巨人とか巨大生物の映画ばっか撮っている彼の名前の頭文字をとって付けられた愛称だからだそうです(Bert I. Gordon)。有名なのは『戦慄!プルトニウム人間(1957年)』とかその続編の『巨人獣 ~プルトニウム人間の逆襲(1958年) 』(トビー・フーパーの某発火映画を思い出す衝撃作)とかでしょうか。他にも夜の海岸と灯台というノワール的な舞台で繰り広げられる四谷怪談的なお話で、裏切られた女が手首や生首となって男に取り憑いて海藻や花瓶の花や指輪といったモノを論理的に加害妄想から現実へと変換していく『空飛ぶ生首(1960年)』(※空は飛びません!)とか、若き剣士と石から蘇った6騎士の7人が悪い魔法使いに誘拐されたお姫様をクエストして巨猿、マグマ、女ゾンビ、ゴースト、火を吹く双頭のドラゴンと闘うといった七つの呪いに立ち向かう血湧き肉躍る"剣と魔法"のこれぞまさにビッグ・アクションアドベンチャー(BIG違いですが...)な『魔法の剣(1962年)』とか色々面白い映画を撮っています。まぁ、どれも見るからにスター不在の出演料の安そうな俳優達とテレビのような安っぽい美術の見るからに予算少なそうなB級映画なんですけれど"これが私の生きる道、文句ある?"的な潔さがあって僕は好きです。Mr.BIG、バート・I・ゴードン。グレートですよこいつはァ!。
 
以上「『マッドボンバー(1972年)』〜 オ・ソロシ巨人B・I・G(バート・I・ゴードン)によるB級映画の快作」のご紹介でした。シネフィルイマジカさんがまた放送してくれるかは分かりませんが、他は安く手に入る作品もありますので機会があればぜひチェックしてみてください。
 
≪『戦慄!プルトニウム人間』 The Amazing Colossal Man (1957年)≫f:id:callmesnake1997:20170513071209j:plain
≪『巨人獣』War of the Colossal Beast (1958年)≫f:id:callmesnake1997:20170513071210j:plain
≪『空飛ぶ生首』Tormented(1960年)≫f:id:callmesnake1997:20170513071211j:plain
≪『魔法の剣 The Magic Sword (1962年)≫f:id:callmesnake1997:20170513071212j:plain

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