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レイア姫はなぜ銃を持つのか? ~ スター・ウォーズとリイ・ブラケットとハワード・ホークス的三角関係

つい最近スクリーンでその"若々しい姿"を見たばかりなのにそんなことが起こりうるとは微塵も想像しておらず、未だに何か信じられないキャリー・フィッシャー*1)、及びその翌日のデビー・レイノルズ*2)の訃報ですが、思えばあの"若々しい姿"は何かフォースの予兆だったのでしょうか。

今の所エピソードVIIIは既に撮影済で問題無いらしいのですが、エピソードIXでは問題になるようです。想像していたよりも早く"『コングレス未来学会議』問題"が現実化していてさらに驚きです。

それはさておき、今回は追悼も兼ねてレイア姫(及びスター・ウォーズ)のルーツの一つを少し探って書いてみたいと思います。

 『スター・ウォーズ(1977年)』におけるレイア姫のキャラ設定 (=銃を持ち、生意気で男性と対等にやりあってたたかう )のルーツに関しては『隠し砦の三悪人(1958年)』の雪姫(上原美佐)の影響が大きいと言われていますが、僕はそれだけでは片手落ちというか半分しか当たっていないのではと思います。

というのもこのレイア姫のキャラ設定はハワード・ホークス映画のヒロインの影響が多分にあると思われるからです(ルーカスはオールタイムベストに『隠し砦の三悪人』を挙げていますが、それと同時にホークスの『空軍/エア・フォース(1943年)』も挙げている程のホークス好きです。また二人には若い頃はレーサーだったという共通点もあります)。

ルーカスはレイア姫のキャラ設定に関して「王女も登場させたいと思いました。彼女はただ美しいだけのひ弱な乙女にはしたくないと思いました」と語っています。このルーカスのヒロイン像の構想には雪姫に加えてホークス的ヒロイン像があったと容易に想像がつきます。

ここでいうホークス的ヒロインとは山田宏一さんいうところの「男と女が全く対等で仕事を共有する相棒であり、ともにたたかう同士」(*3)です。

また『脱出(1944年)』のローレン・バコールによるとホークスは「常に、どんなシーンでも、女は男っぽい態度で ー 無礼に、生意気に ー 演じるべき」(*4)と語っていたそうです。

ジョン・フォードの女房的ヒロインでもなく、ラオール・ウォルシュの情婦的ヒロインでもなく、生意気で男と対等なホークス的ヒロイン。それがルーカスがイメージしたレイア姫の魅力的なキャラ設定ではないでしょうか。つまりクラリス的なおしとやかなお姫様ではなくルークやハンたちと対等に張り合って銃をぶっ放すホークス的ヒロインです。 レイア姫がなぜ銃を持ってたたかっているのかという理由はここにあります。

そしてこのホークス的ヒロイン像の他にも『スター・ウォーズ』でのホークスの影響は枚挙にいとまがありません。

ハン・ソロがモスアイズリーのカンティーナでテーブルの下から銃を撃つシーンはボギーがテーブルの中から銃を撃つ『脱出』からの引用でしょうし、デス・スター攻撃で敵に囲まれて絶体絶命のルークをミレニアムファルコンハン・ソロが間一髪援護するシーンは『リオ・ブラボー(1959年)』でリッキー・ネルソンがすかさずライフルをジョン・ウェインに投げるホークス的アクションの変奏と言えるでしょう。

そして極め付けは『スター・ウォーズ/帝国の逆襲(1980年)』の脚本家にホークス作品を多数手掛けたリイ・ブラケットを起用してレイア、ルーク、ハンのホークス的三角関係を持ち込んでいる点です。

男二人の友情の間に一人の女が加わることによってもたらされる三角関係というのは別にホークスに限定されることもないハリウッド映画のステレオタイプな展開かもしれませんが、これはまさに『虎鮫(1932年)』や『永遠の戦場(1936年)』から連面と続くホークス的三角関係の黄金パターンなのです。

ちなみに『三つ数えろ -The Big Sleep (1946)』、『リオ・ブラボー -Rio Bravo (1959)』、『ハタリ! -Hatari! (1962)』、『エル・ドラド -El Dorado (1966)』、『リオ・ロボ -Rio Lobo (1970)』と言ったホークスの傑作群の脚本を手掛けたリイ・ブラケットはもともとハードボイルド/スペオペSF作家で、キャプテン・フューチャーで有名なエドモンド・ハミルトンの奥さんだった人です。

奥さん!?。つまり女性です。ホークスも女性とは知らずに彼女のハードボイルド小説『非情の裁き』の出来が良かったので『三つ数えろ』の脚本に起用したら女性だったので驚いたらしいのですが筆が早く(ウィリアム・フォークナーと二人で8日で書いた(*5))、話も上手いので度々コンビが続いたようです(ちなみにきっちりとプロットを立てないと書き出せないハミルトン対して彼女はアイデアが浮かぶとすぐに書き始めるのだとか(*6))。つまり彼女もホークスと全く対等で仕事を共有する相棒であったのです。

そしてホークス亡きあと『帝国の逆襲』の初稿が彼女の遺作となります。最終的には映画にその痕跡は無いとwikiには書かれていますが、最終的な映画を見るかぎり、ホークス的三角関係のコンセプトはそのまま生きているように思えます。

ホークス的三角関係は友情関係にある男二人の内一人の自己犠牲で残りの二人が結びついてハッピーエンドがもたらされます。『スター・ウォーズ/ジェダイの帰還(1983年)』では最終的にルークが身を引く形でハンとレイア姫が結ばれるハッピーエンドを迎えます。スター・ウォーズ旧三部作もまたこのホークス的三角関係のパターンの踏襲といえるのではないでしょうか。 

以上、レイア姫(及びスター・ウォーズ)のルーツの一つにハワード・ホークス、ひいてはリイ・ブラケットという才女が深く関係していたというお話でした。

※『スター・ウォーズ/帝国の逆襲(1980年)』はリイ・ブラケットに捧げられています。

リイ・ブラケット - Wikipedia 

May the force be with you...

 

【関連記事】 

    

*1:Carrie Fisher,1956年10月21日 - 2016年12月27日

*2:Debbie Reynolds,1932年4月1日 - 2016年12月28日

*3:ハワード・ホークス映画読本」,2016年,国書刊行会

*4:同上(『私一人』 ローレン・バコール,1984,文藝春秋

*5:このときリイの書きかけの『赤い霧のローレライ』を途中から引き継いだのは親友で子弟関係ともいえるレイ・ブラッドベリ

*6:『赤い霧のローレライ』後書きより


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