映画

『ミニー&モスコウィッツ(1971年)』~ 孤独な男と女を祝福するカサヴェテスのラブスプリーム

アメリカ映画には偉大なJ・Cが二人いる。一人はジョン・カーペンター、もう一人はジョン・カサヴェテスだ。 と、引用すると誰か偉い人が言った名言のように見えるかのテストです(誰もそんな事は言ってないと思いますのでとりあえず僕が言っておきました)…

『マッドボンバー(1972年)』〜 オ・ソロシ巨人B・I・G(バート・I・ゴードン)によるB級映画の快作

最近特に何の予備知識もなくBS(シネフィルイマジカ)でやっていた本作を見てしまったのですが、これが思いのほか大変素晴らしく「ああ、これは映画だ」、とごく当たり前の感想を持ちつつもいたく感動してしまいましたのでここでご紹介させていただきます。 …

未知の映画監督ジョナサン・デミ(とフランソワ・トリュフォーとハイチの関係)

4月26日、やけに羊たちの沈黙のツイートが多いなとぼんやりとtwitterを眺めているとR.I.Pの文字が目に飛び込んでくる。まさかと思い他のツイートを見ると同じ事が書いてある。なんてこった、嘘だろ・・・と思う。twitterはいつも最新のニュースを届けてくれ…

『キングコング(1933年)』 ~ 彼について私が知っている二、三の事柄

いよいよ実写版『美女と野獣』が公開されますが、『美女と野獣』以上に美女と野獣をことさら言及する映画、それが1933年版『キングコング』です。しかしこの映画は映画内で一体何回美女と野獣を言及しているのでしょうか?暇な人は数えてみてください(なん…

『キングコング(1933年)』 カール・デナムとは一体何者なのか? ” 華麗なるヒコーキ野郎”と”カメラを持った男”の物語

今回のスピンオフの話はさておいて、1933年のオリジナル版キングコングを見返すとこれが今みても大層生々しいタッチ、かつ暴力的(象のように人を踏み、虎かはたまた進撃の巨人みたいに人を食らいます)で矢鱈滅多らと面白い事に驚かされます。 なぜこんなに…

攻殻機動隊の世界が5年後に実現? ~ <今そこにある未来ニュース⑥>

最近この人の名前をニュースで見ない日はないですね(と半年前も同じこと書いてましたが...)。若きカリスマ天才起業家”リアル”トニー・スタークこと「イーロン・マスク」。 またもやこの人のニュースです。 今度は攻殻機動隊みたいに脳とコンピュータの…

『花吹雪舞う!春の鈴木清順幻の作品祭り』 ~ 具流八郎との空白の10年:怒濤編

前回のあらすじ 1968年のいわゆる「鈴木清順解雇・封鎖事件」は学生運動のデモも巻き込んで「鈴木清順問題共闘会議」を結成し、多くの映画人を巻き込んだ日本映画界を揺るがす一大騒動と化していました。 一方具流八郎は共闘会議とは距離を置き(*1)、大島…

『花吹雪舞う!春の鈴木清順幻の作品祭り』 ~ 具流八郎との空白の10年:疾風編

いつかその日が来るだろうとは思ってはいても実際にその日が来てしまうとやはり結構ショックだったりする清順さんの訃報(2017年2月22日)。本来であればしめやかに追悼すべきなのですが、既に発表の時点で9日もタイミングを逸している始末(同年2月13日満93…

恐るべし!元が何だかよく分からないポーランドの映画ポスター

最近『モアナと伝説の海』のポスターがオリジナルと違い過ぎると話題になっているようですが、映画ポスターのデザインが公開される国によって変わるのは至極当然のことであります。もともと違っていて当たり前なのでその事に目くじら立てるより、むしろそこ…

『牯嶺街(クーリンチェ)少年殺人事件(1991年)』~ 25年前の撮影風景

よく”伝説の傑作!”とか”××年に1本の傑作!”とか映画の宣伝に使われる惹句は話半分であまり信用できないものが多いのですが、これはまさに掛け値なしに”25年に1本の伝説の傑作”といえるのが『牯嶺街(クーリンチェ)少年殺人事件(1991年)』という作品で…

『祇園の姉妹/Sisters of the Gion(1936年)』〜溝口健二監督の女性ハードボイルド・和風ノワール映画

フィルム・ノワール及びハードボイルド映画というと1941年の『マルタの鷹』を起源とすることが多いようですが、それに遡る事5年前の昭和11年の日本において女性を主人公としたハードボイルド映画が存在していたことをご存知でしょうか?。それが今回ご紹介す…

『ミス・ペレグリンと奇妙なこどもたち(2016年)』 ~ ティム・バートンの奇妙な落書きたち

「ティム・バートンの世界」のデッサン 2014年の11月1日から2015年1月4日まで行われていた「ティム・バートンの世界」展。当方はマヌケなことにちゃんと日程をチェックしておらず、ノコノコと最終日に出かけてしまったのですが、そのあまりの人の多さに驚嘆…

フリッツ・ラングとセルゲイ・エイゼンシュテイン 〜 『メトロポリス(1927年)』のセットより

遅ればせながらつい最近ツイッターを始めたのですが、なるほどこれは面白いですね。毎日自動画像収集装置botとしてけな気に働いてくれて、非常に役立ってくれています(←早くも使い方間違ってるかも)。 特に映画関連ではクラシックな名作の撮影現場の監督の…

巨匠ヴェルナー・ヘルツォークのおすすめ作品5選

ニコール・キッドマン主演で話題の『アラビアの女王 愛と宿命の日々 / Queen of the Desert (2015年)』の近日公開(1月21日(土)より新宿シネマカリテ、丸の内TOEIほか)を記念して、狂気を描かせれば右に出るもののいない巨匠ヴェルナー・ヘルツォークのお…

2016年映画ベスト10

年末ですので2016年映画ベスト10をやっておきます。新作は見てない方が圧倒的に多いのですが、今年見れた数少ない新作映画の中から自分の好きなおすすめの映画を10本(または15本)選んでお伝えします。 では洋邦合わせて1位から。 1位:『ハドソン川の奇…

『北の橋 (1981年)』 ポケモンGO的AR(拡張現実)でパリの町を冒険する最高にキュートなファンタジー・ミステリー映画

2016年を代表するヒット商品であり、あっというまに世間を席巻して、あっと言う間にブームが過ぎ去った感のあるポケモンGOですが(今だと話題はAmazon GO?*1)、これに遡ること35年前にポケモンGO的AR(拡張現実)でパリの町を冒険する最高にキュートなファ…

『ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー(2016年)』をより楽しむための映画7選

JJの『フォースの覚醒』には一ミリも心動かされずに何も覚醒しなっかった私ですが、今回の『ローグ・ワン』に関してはさすがゴジラを見事に復活させたギャレス・エドワーズ監督とあって映画的な萌えどころ、いや燃えどころを心得た、”これこれ、これがSWだ…

『ヒッチコック/トリュフォー(2015年)』と『JACO[ジャコ](2015年)』、天才アーティストのドキュメンタリー二本立て

今月はシネマカリテで面白いドキュメンタリー映画が二本立て(別料金で続けて見ればの話ですけどね)で見れますのでご紹介します。 アルフレッド・ヒッチコック/フランソワ・トリュフォーとジャコ・パストリアスに関するドキュメンタリーです。 どちらも当…

『ツイン・ピークス The Return(2017年)』 ~ 25年振り主要キャストの”今と昔” ー I'll See You Again in 25 years

「あなたの好きなあのガムが、また流行りだすようだ」 25年振りに『ツイン・ピークス』が帰ってくる! 2014年10月3日、 ”That gum you like is going to come back in style !” というリンチ/フロストの突然のツイートは、体の奥深くで全細胞が快哉を叫ぶほ…

Spotifyでおすすめの名盤を探す旅に出る【映画サントラ編】 ~ ”映画史に名を残す名映画音楽作曲家30選(+1)”

Spotifyの4000万曲にもおよぶ広大な音楽の海からおすすめの名盤を探しだしておすすめするという企画の第9弾、【映画サントラ編】です。 世の中には星の数ほど映画が存在しており、それに合わせてサントラも存在しているのですが、映画音楽作曲家に関しては星…

スティーヴン・キングか深夜アニメみたいな泉鏡花の『昼春・昼春後刻(1906年)』と映画『陽炎座』謎記号の秘密

映画『陽炎座』に絵で一回、指で背中に書いて二回、最後のセリフで一回と計四回も出てくる謎記号「〇△☐」ですが、映画の中ではまったく説明がありません。 そこで原作泉鏡花の『陽炎座』を読めば何か分かるかと思ったのですが、そこにも記載がありませんでし…

『夢二(1991年)』 ~ 鈴木清順による"浪漫三部作"の清順時空③

『夢二(1991年)』 前二作が原作付で全くのフィクションの世界を描いていたのに対して、本作はオリジナルで実在の人物(沢田研二扮する「竹久夢ニ」、宮崎萬純扮する「彦乃」、広田玲央名扮する「お葉」)が登場する映画になっています(とはいっても当然の…

『陽炎座(1981年)』 ~ 鈴木清順による"浪漫三部作"の清順時空②

『陽炎座(1981年)』 傑作『ツィゴイネルワイゼン』よりさらにエロ度、グロ度、ナンセンス度、つまりは清順度がパワーアップしたのが本作です。二時間二十分のフルマラソンなのに百メートルの短距離走のペースで全力疾走してるかのようなテンションの高さで…

『ツィゴイネルワイゼン(1980年)』~ 鈴木清順による"浪漫三部作"の清順時空①

結果的に"(大正)浪漫三部作"と呼ばれている『ツィゴイネルワイゼン(1980年)』と『陽炎座(1981年)』と『夢二(1991年)』という三本の映画は同じ監督(鈴木清順)と製作者(荒戸源次郎)と脚本家(田中陽造)と音楽家(河内紀)によって手掛けられてい…

『キラー・エリート (1975年)』 ~ ニンジャと日本刀と拳銃、殺し屋エリートNo.1は誰だ!サム・ペキンパーの裏切りの映画

(※ジェイソン・ステイサムの方ではございません。念のため) DVDが廃盤になっているせいか中古がぼったくり価格になっている本作ですが、今月シネフィル・イマジカで放送されていたようです(PG指定を得るためにカットされた116分の劇場公開版ではなく123分…

『ラロ・シフリンとCTIレーベルのおすすめアルバム50選』 ~ 世界の全ての音楽は越境してクロスオーバーする

ラロ・シフリンというと『ダーティハリー(1971年)』、『燃えよドラゴン(1973年)』といった映画や『スパイ大作戦(1963-73年)』、『刑事スタスキー&ハッチ(1975-79年)』といったテレビシリーズの作曲家として有名ですが、ジャズ関連の作曲家、編曲家、…

クリント・イーストウッド映画の傾向と対策【死者の霊に耳を傾けましょう編】

今ではすっかり巨匠となってしまったクリント・イーストウッド ですが、スキがあれば死者の霊に耳を傾ける、あるいは死者の霊そのものが主役となるというちょっとキワモノ的というか丹波哲郎的な映画を撮ってしまうという傾向があります。以下そのいくつかを…

『ハドソン川の奇跡(2016年)』 ~ クリント・イーストウッドによる四層構造を自由に横断するミルフィーユ映画

『ハドソン川の奇跡』に関して前回は見る前に書いたので今回は見た感想を書きます。 callmesnake1997.hatenablog.com 結論から申しますといまのところ今年見た映画の中でベストです(あまりにも面白いので初日の品川IMAXから近所のシネコンまで3回もみてしま…

”地球外知的生命体探査”に関する傑作SF作品5選【ボイジャー編】

スタートレックの新作があまりにつまらなかったので映画版第一作(TMP)が相対的に傑作に見えてしまうというイヤミな話(JJはこのまま二大SFシリーズを糞化させた戦犯として後世の映画史に名を残すつもりなのか?)を書こうと思ったのですが、タイトル時点で…

虎の尾を踏む複眼の男達は蝦蟇の油の夢を見るか? ~ 黒澤明の唄と関連書籍

黒澤明自身が見た夢を元にして製作されたと言われている1990年に公開された『夢』という映画のいくつかのエピソードには実は有名な原作本が存在していた事をご存じでしょうか?。1978年3~9月に週間読売に連載され、1984年に単行本化された『蝦蟇の油―自伝の…