今年は完成度の高いものよりも挑戦している映画を選びました。
『HERE 時を越えて』(2024)
これは凄い(ゼメキスはいつも凄いけど)。切返しの無いグラフィックノベル的2Dフレームを3D的にオーバーラップさせ、不自由な定点空間を自由な(複雑だがよく練られた)時系列で新たな映画的時空を創出するという、デジタルが可能にした壮大なハリウッド製実験作。こんな映画今まで見た事ない。

『血(1989)』/『溶岩の家』(1994)/『骨』(1997)
『血』はペドロ・コスタ長編第1作目で予算無くほぼ自主映画的な制作だったらしいのだが、これがスタンリー・コルテスが撮影したかの如き見事な陰影の撮影と照明で驚く。更に驚くのは劇伴にザ・ザの「This is The Day」を使うという趣味の良さで、これは一度しか起こり得ない絶対的処女作の魂の彫刻。『私はゾンビと歩いた!』(1941)のリメイクを企画を発端として全く別物になっている『溶岩の家』や、決定的な瞬間を省略しているが故に何を描写して何を描写しないかの判断が厳格な『骨』も素晴らしかった。尚、初期三作のミューズ、イネス・デ・メディロスをポルトガルの女優を探していたリヴェットに推薦したのは助監督時代に知り合いだったペドロ・コスタで、イネスは立て続けに『血』(1989)から『彼女たちの舞台』(1989)に出演して女優デビューを果たしたとの事。



『清原惟監督特集 七つの合図、夢のなかで』(2015~2022)
短編集および『ひとつのバガテル』(2015)@ル・シネマ 渋谷宮下
大学の卒業制作なのに既に完成度の高さに驚かされる清原惟監督作品。ピアノとか林檎とかの日常描写を積み重ねた上での非日常描写が静かに自然なのが良い。音楽に関しても日常音のノイズが二重奏のように絡み合うのが素晴らしい。

『Underground アンダーグラウンド』(2024)
土地とその記憶だと多少アピチャッポンっぽいけど、それとは全く異なり、舞台は日本でも邦画ぽくなく、ドキュメンタリーともアートともジャンル形容不能で斬新な映画体験をもたらす小田香監督の新作。尚、印象的な音響はイメージを補強/従属しない様にと要望したとの事。

『羅小黒戦記2 ぼくらが望む未来』(2025)
松本憲生並の2D神作画と3Dレイアウト背景が自然に融合していて複雑だけど退屈なリアル路線よりもこれがアニメーションの正統な進化に思える。ショット毎に身の詰まった武侠/クンフーアクションを全編繰り広げるのも凄いが、たった一人で始めた(Wikiには製作費=生活費とある)と言われる原典のWEBアニメシリーズ含め、木頭(MTJJ)監督の空間と間とユーモアの演出に傑出した才能を感じる。




『メガロポリス』(2024)
二回見て二回とも理解できずに三回目に挑戦しようとしていたら上映終了していたという本作。失敗作という意見もわからないでもないが、失敗作ですらない保守的な映画ばかりの昨今の映画界で孤立無援に挑戦するコッポラはドン・キホーテのように果敢で、ラストで唐突に流れるThe Theの「Lonely Planet」に落涙する(2025年はペドロ・コスタの『血』い続いて映画館でThe Theを聞いた稀有な年であった)。
『ロングレッグス』(2024)
割と賛否両論の評が聞こえてくる本作。『セブン』や『羊たちの沈黙』の路線を期待すると裏切られるが、『CURE』や『エクソシスト3』の路線を期待すると裏切られないというなかなか通好みのホラー。ニコラス・ケイジ以外派手さはないが、楳図かずお的、かつ実験的で呪術的な怖さがある。
『CITY THE ANIMATION』#5(2025)
これは凄い。デ・パルマ的な2分割同時進行画面を更に分裂症的に有機的に9分割まで拡張拡散してパノラマ的に収束するという、妄想的なアイデアならともかく実際に膨大な作画枚数で実現してしまう狂気の沙汰。
また、上記に加えて
・背動長回しレース
・OP〜EDまでノーCM ・予告での連続活劇
・Bパート全て本格ミュージカル
etc、と楽しさとかわいさを連続的に持続させたい欲望を追求してしまったら、それぞれ個性ある街の住人を大量かつ偏執狂的に動かしまくるというSerial ExperimentsなCITY THE Animation。
https://x.com/i/status/1952308536383332726
\作画枚数16,000枚/
— 『CITY THE ANIMATION』公式 (@city_anime_info) 2025年8月4日
にぎやか画面!#アニメCITY #animeCITY pic.twitter.com/pVswQD2Aml

以上2025年映画ベスト10でした。