『映画監督 村川透 和製ハードボイルドを作った男』 山本 俊輔/佐藤 洋笑 (著)

僕の大好きな監督である村川透さんのドキュメント本が出ていたので遅ればせながらご紹介します。自分は監督の大ファンを自称しつつもそのTVも含めると400本(!)近いフィルモグラフィーの大部分を見ていないというファン失格の不届き者です。

まぁ、自称ファンの不届き者ではありますが、主演:松田優作撮影:仙元誠三と共に和製ハードボイルドアクションの黄金トリオ音楽:大野雄二を加えると黄金カルテット)による金字塔とも言える『遊戯シリーズ(78〜79年)』や角川での『蘇る金狼(79年)』、『野獣死すべし(80年)』、TVの『探偵物語(79〜80年)』にすっかり魅了されてしまった者としてはこの本を買わずには入られません。

特にマン=オルトンのコンビにも比肩しうる村川=仙元コンビによる濃密なワンシーン・ワンカット長回しアクションシーンは日本映画のみならず世界の映画史にも類を見ない独特の映画空間を現出し、松田優作のしなやかなアクションと相まってその輝きは永遠に失われることのない魅力を放っています。

この本はそんな魅力的な映画を撮ってきた村川さん御本人はもちろん、その周辺の重要人物(ご家族、映画関係者、出演者)のインタビューも含め、非常にかゆいところに手が届く作りのドキュメント本です。
 

<本書の内容>

  • 序章:タフでなければ、撮っていけない
  • 第一章:山形の異端児、東京へ
  • 第二章:助監督奮闘記
  • 第三章:監督デビュー、そして挫折
  • 第四章:松田優作と作り上げた伝説
  • 第五章:舘ひろし柴田恭兵あぶない刑事』たちとの出会い
  • 第六章:さらば、永遠の戦【と】友【も】よ
  • 終章:老兵は未だ、闘い続ける
本書はその出自から現在に至るまで各章多彩なエピソードが語られ映画監督 村川透」の魅力を余すところなく伝えています。その中でも特に僕が興味深かったのは二章の助監督時代(及びそれ以降も)になります。
村川さんは日活の助監督として主に(鬼の)桝田利雄監督に師事されていたそうで日活では王道娯楽路線、しかも『トラ・トラ・トラ(70年)』のようなハリウッド大作においても日本側演出部総チーフとして過酷な現場を手掛けられていたそうです(同じ日活とはいっても清順さんのようなプログラムピクチャー路線ではなかったんですね)。ちなみに清順さんの助監督を務めていた少し先輩にあたる長谷部安春さんは東京出身の都会派で、一方村川さんは故郷の山形の田舎でフランス映画に浸って都会にあこがれる地方出身者ということでちょっとしたライバルともいえる対照的な関係(アドリブの好き嫌い含む。村川さんはもちろん前者)だったようです。
そして助監督時代は王道娯楽路線であったのに対して監督としてはロマンポルノでデビューしてプログラムピクチャーで名を馳せるというのが、この時代背景とも相まって面白いところです。ここらへんは処女作『白い指の戯れ(72年)』(8日間で撮った)からセントラル・アーツ発足に至る『最も危険な遊戯(78年)』(13日間で撮った。あの長回しもたった1日)まで常識に捕らわれない映画作りのエピソードも存分に記載されています。また四章の松田優作との一期一会的なスリリングな友情関係も第三者の立場から様々な関係者の取材がなされ読み応えがあります。
という訳でいろいろというかほとんど知らなかったエピソードばかりで、一つの映画史的な時代の証言としても一人の映画監督の熱い奮戦記としてもおススメの本になっています。

 


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