『古都憂愁 姉いもうと』/ 『なみだ川』 (1967年)~ 三隅研次の女性映画③(藤村志保編)
『古都憂愁 姉いもうと(1967年)』
キャストは藤村志保と新人の若柳菊(現:鹿内寛子)の姉妹で京都の料亭を舞台に色々入り組んだ人間関係が最後には修復する話です。八千草薫、船越英二、藤岡琢也の助演陣もキャラの立った素晴らしい演技です(若柳菊に関しては...大人の事情なのでしょう)。
川口松太郎の原作「古都憂愁」を依田義賢が脚色、スタッフは撮影が『婦系図(62年)』の武田千吉郎で美術が内藤昭です。
戦中から戦後の数年間の京都を舞台としており、京都の美しい屋外ロケと大映京都の屋内セットがシームレスに融合しており、ここらへんの切り替えはさすがに自然で巧いです。(注:以下ネタバレというか画像バレです)
<美しい京都の屋外ロケから屋内セットへの切り替え>
<シネスコ画面内にスタンダード画面を入れる二重構図>
<藤村志保迫真の目線演技>
泣いて謝りつつも略奪愛する気マンマンの能面みたいな悪女目線演技です。他にも長廻しで酔って一曲歌うといった難しいシーンをこなしていて次作含めて彼女の代表作ではないでしょうか。
<足のフェチズム>
本作の真のヒロインは実は藤村志保ではなくて八千草薫です。なぜなら三隅研次の女性映画のヒロインの資格を得るには必ず足袋を脱いだ裸足をアップで捉えられねばならないからです(前々回①京マチ子編、および前回②若尾文子編を参照)。以下が八千草薫がヒロインであるその証拠写真です。八千草さんは悪女役の藤村さんとは対象的に母性的な庇護者として可愛らしく撮られており、役得でございます。
『なみだ川(1967年)』
山本周五郎の原作「おたふく物語」を、前作同様依田義賢が脚色した作品で『古都憂愁 姉いもうと』の姉妹編のような人情話しの時代劇です。キャストは姉が藤村志保、妹も同じく若柳菊で、おたふくである藤村志保が憧れるのがイケメン彫細工師の細川俊之です。
スタッフは撮影は三隅組の牧浦地志、美術は内藤昭で純正三隅組の大映京都時代劇です。既に数年前から映画界には斜陽の影が差しており。四年後の1971年には大映も倒産しますが、この映画ではそのような影は微塵も感じさせない大映京都の技術的達成度を示しています。
<シネスコ画面内にスタンダード画面を入れる二重構図>
時代劇だと当然の如く障子や簾や御簾を使って二重構図を作っています。
<足のフェチズム>
おたふく藤村志保とイケメン彫師細川俊之のラブシーンです。やっぱり足で表現してますね。という訳で三隅研次の女性映画は足にもチューモーク!です。
(画像は全て© KADOKAWA)
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