現実化する『ミクロの決死圏』のナノマシーン医療 〜 <今そこにある未来ニュース③>
過去の予言的なSF作品を現実のニュースと絡めて未来を妄想する与太話の不定期連載企画<今そこにある未来ニュース>の第三弾です。今回はかなり現実化されているネタなので妄想分少なめです。ちなみに過去の二回は以下の記事となります。
callmesnake1997.hatenablog.com
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今回は「血中を移動して正確にがん腫瘍を攻撃できるナノロボットの開発に成功した」というニュースです。ついに「リアルミクロの決死圏が実現か?」というお話ですが、今だと「アントマン、デッドプールのがん治療に成功か?」とか言った方が分かりやすいかもです。
バクテリアが磁場の方向に引き寄せられる特性(磁気走性)を応用して腫瘍をピンポイントで攻撃するナノロボットを開発したとのこと。磁場をコンピュータで制御して抗がん剤を投与する仕組みみたいですね。ナノロボットの中身ががよく分かりませんが単なる“ドラッグデリバリーシステム(DDS)”の話かもしれません。まぁ、映画に例えると放射能を使って小型原子力潜水艦プロテウス号を制御するようなものでしょうかね。
似たような仕組みで光に向かって移動する走光性を利用したナノマシーン研究も進んでいるようです。以下は全て片岡一則・東大教授に関連するニュースです。日本でもいつのまにか(というか去年から)川崎にナノ医療イノベーションセンターなるものができて既に運営してるみたいです。未来ニュースならぬ普通の現在ニュースでございます。
まさにリアルミクロの決死圏状態です。実際、上記の片岡一則教授は「映画の世界を現実にするんです」と語っておられますが若い頃に『ミクロの決死圏』を見て医療工学者をめざした方なのだそうです。映画と現実が相互影響して未来の医療を実現するなんてなんか映画みたいなお話ですね。
この技術が確立されるとがんでも普通の病気のように通院で治療が可能になるそうです。将来的には「様々なナノマシンが診断し治療する『体内病院』を実現させたい」というのが教授の抱負で、ぜひ近い将来に実現して頂きたいものです。
個人的にはがん治療以外でも何を食べても血糖値をコントロールしてくれるナノマシンとかに期待です。そういえば『攻殻機動隊 GHOST IN THE SHELL(1995年)』ではビールを飲んでも30分で体内の化学プラントがアルコールを分解してくれる世界観でしたっけ。同じようにこの技術が発展すると十年後の世界はダイエットナノマシンとかが当たり前になっているかもしれませんね。
ちなみに映画『ミクロの決死圏(1966)』の冒頭は以下のステートメントにて始まります。
この映画はあなたを前人未踏の場所へと導き、誰も目にしたことのないものを見せてくれるだろう。しかし月にも到達する人類にありえないことはない。これから目撃する出来事もいつの日か現実となるのだ。
今みるとなんとも予言的ステートメントです。当時は電卓すら普及する前の時代に作られた作品なのですが、弾けるシナプスの光の中で脳内の患部である血塊をレーザー銃で焼いて治療するというの当時は夢物語でも、現在では既に腫瘍やシミのレーザー治療で現実となっています。
この映画の監督は職人監督の中の職人監督、リチャード・フライシャーです。冷戦下の政府要人をミクロ化した医療チームが体内に入って治療するという一見荒唐無稽な物語を、一時間というタイムリミットを設定したサスペンス映画として、あるいは次々と問題が発生してはそれを乗り越えるアドベンチャー映画として、あるいは特殊効果撮影と相まった美術(両方ともアカデミー賞受賞)が美しく幻想的な航海を彩るスペクタクル映画として、職人監督らしい作家の刻印が無い自然な演出でフライシャーらしい普通に面白い映画になっています。
尚、現在ジェームズ・キャメロン製作でリメイク企画が進行中で、監督にはギレルモ・デル・トロがオファーされていているそうです。実現すれば今の技術で3D映えのする幻想的でリアルな描写の映画になりそうですね。